3月20日10時~12時、早稲田奉仕園にて「アフリカと持続可能な開発(SDGs)」に関するセミナーが開催されました。SDGsは2015年9月の国連総会で採択されたミレニアム開発目標(MDGs)に続くもので、途上国と先進国を含むすべての国で達成が求められるグローバルな目標です。

はじめに動く→動かす事務局長の稲場雅紀氏は、世界から貧困をなくし、持続的な世界を築いていくこと、また、先進国も達成が求められる点で重要な目標であることが言及されました。MDGs時代、多くの人が置き去りになり、多国籍企業の税逃れも深刻化し、グローバルな目標があるにもかかわらず危機が蔓延しました。社会を持続可能なものに変化させるためには、途上国や新興国を中心に開発を進めていくのに加え、そのための資金調達を先進国がイニシアティブをとって行う必要があります。

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こうした流れの中で、アフリカでは2013年にアフリカ連合(AU)創設50周年を記念し、2015年、アジェンダ2063を採択し、今後50年にアフリカの主体性を現代の流れの中でいかに作るのか、7つのアスピレーションを示しました。これはいかにしてアフリカ人自らの主体性を取り戻すのかという点で重要なものであり、市民社会と今後のアフリカを考える上での根幹をなします。

稲場氏は「闘いは続く、勝利は確実だ」(アンゴラの革命家アゴスティニョ・ネト氏)、「もう一つの世界をつくらなければならない」(ケニア人作家グギ・ワ・ジオンゴ氏)という言葉を引用し、SDGsを核に市民社会も今後真剣に取り組む必要性を指摘しました。

国際NGOネットワーク「貧困をなくすためのグローバル・コール」ケニア(Global Call to Action against Poverty/ GCAP Kenya)のフローレンス・シェヴオ氏は、アフリカの立場からSDGsの重要性について説きました。

2000年5月、エコノミストでアフリカは「絶望の大陸」と称されました。紛争やエイズ、マラリア、自然災害や飢餓、国家が主導する違法行為や独裁体制等がはびこり、希望がないとされました。こうした見解は多くの人にありますが、フローレンス氏はアフリカには「希望がある」ことを強調しました。

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これまでのアフリカへの支援や交渉は南アのズマ大統領やサーリーフ・リベリア大統領、国連事務総長特別顧問のアミナ・モハメッド氏をはじめ、様々な人の協力や貢献によって作り上げられました。MDGsは多くのことを達成した一方、「処方箋型」であったため多くの課題が残り、アフリカ側も共通の立場でSDGsに関するポジションペーパーを出しました。SDGsはすでに実施段階に入っており、アフリカでも各国が政策を実施すべく、データや統計を取りながら、政府と市民がオーナーシップをもって開発を進めていく必要があると言います。それには資金確保や透明性や説明責任を伴った政治的意思が必要ですが、これらが欠如していることが人々のオーナーシップを阻害していることも事実です。

アフリカでいかに政治的意思を確保し、各国の政策と整合性や一貫性をもたせて実行するか、アフリカ各国とパートナー諸国の取組みが求められています。

アフリカ日本協議会代表理事の津山直子氏は、食料の持続可能性の観点からSDGsを語りました。アフリカの多くの国々は農業を主要産業としていますが、今、農業生産性が脅かされている実態を説明しました。

例えば森林の伐採や長距離輸送、加工包装、冷蔵冷凍大型スーパーやごみ焼却等、化石燃料を使う農業は温暖化の原因となっており、環境面に影響を与えます。現在種子会社上位10社のうち7社がアグリビジネス関連となっており、遺伝子組み換えがなされた種は農業生産そのものに影響を与えます。

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アフリカにおける土地収奪も深刻な問題です。大企業が土地を長期リースし、農民が追われる事態が出ています。収奪した土地は輸出用作物生産に使用されており、現地の消費作物不足にも影響を与え、特にモザンビークでは6000ヘクタールが大豆生産のために収奪されました。

アフリカは主食が多様です。トウモロコシや小麦、モロコシ、雑穀、豆、キャッサバ、ヤムイモ、タロイモ等、特にイモ食文化が盛んであり、地域の食料循環を持続可能なものにするにはローカルマーケットを維持させることが重要な鍵となります。

食料は人間の尊厳を守るものであり、小規模農業、家族農業やアグロエコロジーを推進すること、食料の主権を回復すること、食料の権利を守ることが重要であると指摘しました。

日本ではSDGsの議論の中では日本国内のSDGs達成に加え、アフリカでの達成を援助することが重要であると認識されています。一方、アフリカ側もSDGsの議論の中で、今、国を挙げて政策やローカルなレベルにまでいかにオーナーシップをもって持続可能な社会を築いていくかが重要な論点となっています。

フローレンス氏はそうした議論の中でサーリーフ大統領やアミナ氏をはじめとするアフリカの主導者が国際交渉の場でオーナーシップを発揮したことの重要性を指摘しました。また、津山氏は援助の文脈の中で生産性を多面的にみて小規模農民をはじめとする人々が連帯していくことの必要性を訴えました。こうした現代の新たな植民地主義に人々が連帯して対応する必要性は、アフリカの多くの人々に認識され、アフリカ人来場者からも同意する声が上がりました。

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TICADでは国益が求められます。とはいえ、TICADで得られる利益をいかにアフリカの人々の裨益するようなものとするか、今年G7が終了した後にTICADが行われますが、そうした議論を踏まえてアフリカ開発につなげていくことの必要性が稲場氏から言及されました。