10月4日(水)午後2時~4時まで、聖心女子大学グローバル共生研究所にて、「暴力を止め、グッド・ガバナンスを促進する市民社会の役割:ケニア大統領選挙の事例から=アフリカ民主主義・リーダーシップ研究所(IDEA)所長デニス・コーデ氏を迎えて=」を開催しました。
冒頭では、会場となった聖心女子大学グローバル共生研究所の大橋正明所長より開会のご挨拶をいただき、続いて世話人の稲場さんよりデニス・コーデさんの紹介と今回のセミナー開催に至った背景が説明されました。
デニス・コーデさんからはまず、ケニアの地理的位置と隣国との関係についての簡単な説明、独立以降の一党独裁体制が1990年代に入って複数政党制に移行した経緯、一時は多くの政党が乱立する事態になったものの、いまは、解散、合流の末、政党も集約されつつあるという状況が説明されました。
2010年に憲法が改正されて立法、行政、司法の三権分立が確立。今年8月の大統領選挙が最高裁判所の判断で再選挙になったことは、司法の独立がある程度担保されていることの証になるのではないかとの意見が述べられました。ただし再選挙については、野党側は最低限の改革を行ったうえでの再選挙を求めており、まだ情勢は流動的なようです。
また、ケニアの選挙後の混乱について、欧米を中心とした外国のマスメディアからは部族対立によるものであるという論調が多くみられるものの、実際には部族対立はほぼ皆無であり、ケニアとして統合されていることが強調されました。ただし、選挙になると得票率をあげるために、部族を持ち出して支持をあおぐという方法もとられることがあり、一般の人びとへの啓発活動の重要性が指摘されました。選挙以降、フェイクニュースなどによる与党のメディア操作、取材の制限など体験しており、独裁時代に戻るのではないかという懸念が払しょくしきれないこともあげられました。
デニス・コーデさんの発表に続き、白戸圭一さんがコメントを述べられました。世界のなかでも民主主義が進んだ国だと信じられてきたアメリカはいま、分断のさなかにあるものの、司法やメディアによる「チェック&バランス」が機能していることも確かで、その点において日本の状況に不安をおぼえること、また、ケニアはアフリカの中でも民主主義の進んだ国であり、日本が一方的に民主主義を教えるという立場にはなく、互いに学びあって解決策を模索することができるのではないかと提案されました。
質疑応答では、デニス・コーデさんから、NGO団体の登録名について、公用語である英語とキ・スワヒリ語に限られており、地方の言葉は認められていないことや、国レベルのNGOの連合体について、資金力に乏しく政府の資金に依存していることなどが指摘されました。また、再選挙後の混乱や暴力行為が懸念されるとの参加者からの指摘に対しては、現在のケニアの政治状況は複雑で予見が難しいこと、選挙後の動きについては様々な可能性があり予断を許さないものの、国際社会や各国の市民社会を含めてネットワークを組み、協力してケニアの市民社会の声を国外にも伝えていきたいと話してくれました。最後に、最悪の混乱を引き起こさないためには、国際社会や各国の市民社会の人びとが状況を注視してほしいと訴えました。
忙しい日程を調整していただいたデニス・コーデさん、白戸圭一さん、平日の午後にも拘わらずご参加いただいた皆さまに心より感謝申し上げます。また、本事業は「世界の人びとのためのJICA基金」活用事業として行われたことをお伝えすると同時に、御礼を申し上げたいと思います。ありがとうございました。