2015年9月にそれまでの「Millennium Development Goals (MDGs)」 に代わる新たな開発目標「Sustainable Development Goals(SDGs)」が発表されました。当然アフリカもそのターゲットの主要課題地域であり、多くの市民社会がその目標達成に向けて取り組んでいます。ITCADのサイドイベントでは、それぞれの分野で活躍する計5名の代表者による、TICADとSDGsの関係、そして市民社会の役割についての議論を行いました。
本イベントはアフリカ日本協議会、ジョイセフ、ACE、そして日本労働組合連合による共催で行われました。
登壇者は、Falu Njie氏(SDGs アクションキャンペーン、ケニア)、Florence Syevuo 氏(SDGsケニア・フォーラム、ケニア)、Maoungo Mooki氏(アフリカ市民協議会、ボツワナ)、近藤 光(ACE、日本))Willibroad Dze-Ngwa氏(非識字・紛争・人権侵害に反対するアフリカ・ネットワークカメルーン)の5名でした。
第一部ではアフリカ全体、そして開催国であるケニアでのSDGsへの取り組みを紹介しました。
まずアフリカのSDGsという文脈で、Falu Njie氏からのプレゼンテーションをしてもらいました。アフリカにおいてはだれがSDGsの目標実現のための実施を行うか、その実施者としてのアフリカの各国政府、そして各国の市民社会の役割が重要であると強調しました。
続いてFlorence Syevuo氏からはケニアのSDGsについての発表が行われ、実はケニアはMDGsにおいても高い成果を出していたことを強調、そのうえでSDGsでもさらに多くの成果を上げるべく、政府と市民社会が協力体制を持っていることを紹介しました。
第二部では、今回TICADに参加した市民社会の代表から、それぞれの分野でのSDGsとアフリカの取り組みについて紹介をしました。
Moungo Mooki氏からは女性、ジェンダーの視点からSDGsとMDGsの違いを述べ、MDGsで十分な効果を上げられなかった反省から、「政治的なコミットメントと適切な財政支援」「すべての開発プロセスへの女性の参画」「すべての子どもたち、とくに少女たちに対する質のよい教育」が大切であると強調しました。
続いて近藤氏はアフリカにおける子どもと若者の人口の増加と、それに伴う教育の重要性と搾取の危険性を唱え、自らの所属団体であるACEのガーナにおける児童労働を無くす活動を例にして、すべての子どもが搾取から守られる形の経済発展と若者への雇用の創出の重要性を訴えました。
最後にWillibroad Dze-Ngwa氏は平和構築の文脈で話をしました。アフリカにおける紛争の多くは、若者たちの先鋭化(Radicalization)と非常に深くかかわっており、政府や年長者が若者の未来を奪い不安定な社会しか提供できないことが問題であるとし、教育、雇用とともに安定した未来がある社会の構築を強調しました。
各者登壇の後は、日本の労働組合連合の吉田昌哉氏にコメントをいただいきました。TICADでは投資や経済発展が主張なテーマとなっていて、多くの民間企業も参画しているが、ここで登壇した人々が主張したように、すべての人を取り残さない形で、働く人が適切な形態で仕事をし、開発の恩恵を受けるべきであると言われました。
奇しくもTICADⅥのテーマにで、特に「産業化」と「社会の安定」と深くかかわるディスカッションとなりましたが、保健分野と並んでこの二つがアフリカの開発文脈で非常に大きな比重を占める問題であることが明らかとなり、まさにSDGsとTICADの目指すものが一致していることを証明することとなりました。
執筆:ACE ガーナ・プロジェクトマネージャー 近藤光